アートメイクをしていると、MRI検査を断られるのではないかと不安に感じる方も少なくありません。特に目元など皮膚の薄い部位に施している場合、その影響を心配する声が多く見られます。

実際、アートメイクに用いる色素の含有成分であるわずかな金属がMRIの磁場や電磁波に反応し、やけどや画像の乱れが起こる可能性が指摘されています。しかし、正しい情報と準備があれば、安心してMRI検査を受診することが可能です。

本記事では、アートメイクとMRI検査の関係、注意点、誤解の真相について解説します。

MRI検査とは

MRI検査とは、「磁気共鳴画像法」ともいい、強力な磁場と電磁波を利用して、体内の断面画像を取得する医療技術を指します。X線を用いたCT検査とは異なり、放射線被ばくの心配がないため、体への負担が少ない点が特徴です。

MRIでは、体内の水素原子の動きを読み取り、画像として可視化します。これにより、脳や脊髄、内臓、関節など全身の幅広い組織を高精度で映し出すことが可能です。

特に軟部組織構造を調べる際に有効とされ、疾患の早期発見や詳細な診断に役立っています。検査時には筒状の装置に入り、数十分から1時間ほどかけて静止状態で撮影が行われるケースが一般的です。閉所が苦手な方には、オープン型のMRIを勧められることもあります。

近年では、より高画質な画像が得られる3テスラMRIも普及しつつあり、診断の精度が一層向上しています。整形外科や脳神経外科、婦人科など幅広い診療科で活用されており、非侵襲的に体の内部を詳細に把握できる検査法として注目されている技法です。

アートメイク後でもMRI検査は受けられる?

MRI検査で使用する磁場や電磁波は、金属に反応する可能性があります。そのため、アクセサリーや時計などの貴金属を身に着けている場合は、外して検査を受けるケースが一般的です。

アートメイクで使われるインクにも金属成分が含有されますが、通常はMRIに支障をきたすほどではなく、多くの場合、支障がないとされています。ただし、まれに皮膚が熱を持ったり、検査画像に乱れが生じたりする事例も報告されているため、受診する前にアートメイクの詳しい施術歴を主治医に申告しましょう。

また、施術から時間が経過して色が薄くなっている場合も、金属が残っている可能性があります。見た目では判断がつかないことも多いため、施術直後でなくても申告を徹底しましょう。事前の情報提供が安全な検査を受ける上で重要なポイントです。

MRIを受けた場合に考えられるリスク

MRI検査は安全性の高い検査方法ですが、金属に反応する特性があるため、場合によっては注意が必要です。特に金属成分を含むアートメイクについては、まれにトラブルが生じるケースも報告されています。

ここでは、アートメイクをした状態でMRI検査を実施する場合のリスクについて解説します。

画像の乱れ

アートメイクに用いられるインクには、ごくわずかに金属成分が含有されているケースが一般的です。この成分がMRI検査時に磁場と反応すると、画像に乱れ(アーチファクト)が生じる可能性があります。

こうしたトラブルにより、特定の部位に白く抜けたような像が映ったり、周囲の組織がゆがんで見えたりすることがあるため注意が必要です。特に、アートメイクの施術を行った箇所の近くで顕著に現れやすく、病変の見落としや誤診につながるリスクもゼロではありません。

ただし、現在主流となっている最新の色素では金属の含有量が抑えられています。そのため、画像への影響は比較的少ないとされていますが、顔や頭部など重要な診断部位にアートメイクを施している場合は、検査前に必ず医師に伝えるようにしましょう。

熱感ややけどの可能性

MRI検査では強力な磁場と電磁波が使用されますが、アートメイクに含まれる金属成分がこれらに反応して微小に発熱するケースがあります。その結果、施術部位に熱感やチクチクとした刺激を感じる場合があり、まれに軽度のやけどを引き起こす事例も報告されています。

特にアイラインは、色素が円状になっているため、MRI検査の磁場と電磁波で誘導電流が発生しやすくなります。これにより発熱し、やけどするリスクがあるため注意が必要です。

ただし、こうした症状は頻繁に起こるものではなく、すべてのアートメイクがリスクを伴うわけではありません。体感は人によって個人差があり、同じ施術でも症状が出る人と出ない人がいます。リスクを最小限にするためには、アートメイクの有無や施術部位を、検査前に主治医や検査技師に伝えることが大切です。

検査の中断や再検査

MRI検査中に違和感や熱感などの異常を覚えた場合、安全性を最優先に考え、検査を途中で中断することがあります。また、アートメイクのインクに含まれる金属成分が原因で画像にノイズやゆがみが生じた場合も、診断に必要な情報が得られず、再検査が必要となる可能性があるでしょう。

特に脳や目元など、重要な診断部位にアートメイクが施されていると、画像の精度に影響が出るおそれがあります。しかし、こうしたリスクは事前の正確な情報提供によって軽減できます。検査前にアートメイクの施術歴や部位を主治医や検査技師に伝えておけば、装置の調整や検査部位の見直しなど、適切な対応がとられるため、スムーズに検査を受けやすくなるでしょう。事前申告は、不要な中断や再検査を避けるための大切なステップです。

アートメイク後はMRIが受けられないといわれる理由と誤解

アートメイクをしているとMRI検査が受けられない、あるいは危険だといった情報を目にすることがあります。確かに一部のケースでは注意が必要ですが、「受けられない」と一律に断定するのは誤解に基づくものです。

実際には、現在アートメイクに使用されている多くの色素は安全性が高く、問題なく検査を受けられることがほとんどです。本項では、アートメイクの施術後はMRI検査が受けられないといわれる理由と誤解が生じる背景を解説します。

金属成分が電磁波に反応するため

MRI検査では強力な磁場と高周波の電磁波が使われるため、時計やアクセサリーなどの貴金属は外さなければなりません。アートメイクで使用するインクにも極微量の金属が入っており、まれに磁場や電磁波に反応するケースがあります。

医療機関の多くでは、アートメイクをしている場合は事前に申告するように注意事項が掲示されているでしょう。そのため「アートメイクをしているとMRIは受けられない」と誤解している方も少なくありません。

従来のアートメイクに使われていた色素には、金属含有量が多いものもあり、画像への影響や熱感が問題視されることもありました。しかし、現在の色素は安全性に配慮されたものが主流となっており、金属による影響は最小限に抑えられています。

それでも、万一に備えてMRI検査を受ける際はアートメイクの有無を医療機関に伝えることが大切です。リスクはごくまれですが、完全にゼロとは言い切れないため、医療機関でも事前申告が推奨されています。

安すぎるインクや無許可のインクは注意が必要

アートメイクで使用される色素の品質は、施術の安全性に直結します。極端に安価なインクや、FDA(アメリカ食品医薬品局)やCE(EUの安全規格)の認可がないインクには注意が必要です。

こうしたインクは、成分表示が不十分であるほか、金属が多く含まれているケースも少なくありません。MRI検査で画像にノイズが生じたり、施術部位が発熱したりする場合は、品質の悪いインクが起因している可能性があります。

一般的に、多くの施術機関や医療機関では、安全性に十分配慮して基準を満たしたインクのみを使用しています。しかし、アートメイクは医療行為であり、免許を持たない施設では、粗悪なインクを使用しているおそれも否めません。アートメイクを受ける際は、使用されるインクの種類や安全性について、事前に確認しておくことが大切です。

近年は大きな問題にはならない

これまで、アートメイクによるMRI検査への影響について、いくつかのリスクについて解説しましたが、近年ではその心配は大幅に軽減されています。現在主流となっているアートメイク用の色素は、安全面を考慮して金属成分の含有量が抑えられているためです。アートメイクの施術を受けた後にMRI検査を受けても、深刻な問題が発生するケースはほとんどありません。

実際に、多くの医療機関ではアートメイクがあっても特別な問題なくMRIを実施しており、検査中に異常が発生したという報告はほとんど見られません。MRI検査を受ける際のリスクはあくまで例外的なものであり、過度に不安を感じる必要はないでしょう。ただし、より安全に検査を受けるためにも、事前の申告は不可欠です。

アートメイク後にMRI検査を受ける際の注意点

アートメイクをしている場合でも、基本的にはMRI検査を受けることが可能です。ただし、色素に含まれる金属成分が影響を及ぼす可能性があるため、ポイントを押さえた上で検査を受けましょう。

ここでは、アートメイク後にMRI検査を受ける際の注意点を3つ解説します。

医師に申告する

アートメイクをしている場合、MRI検査を受ける際には、事前に医療機関へその旨を伝えることが大切です。施術箇所や施術時期、使用したインクの種類など、詳細な情報を把握しておくと、医師による的確な判断が仰げます。

申告を怠ると、思わぬ画像の乱れや不快な症状が現れるケースも考えられます。自己判断はせず、医師に対して正確な情報を伝えるように留意しましょう。

アイラインは刺激を受けやすい

アートメイクの中でも、アイラインは特に注意が必要な施術部位とされています。アイラインにアートメイクを施すことで、色素が円状になります。これによりMRI検査の磁場や電磁波で誘導電流が発生しやすく、熱感を覚えたり、やけどしたりするリスクが高まるのです。

さらに、アイラインには発色をよくするために、比較的金属成分の多い色素が使われるケースもあります。わずかながら熱感やチクチクとした刺激、まれにやけどなどのリスクが伴う場合があります。

とはいえ、こうしたリスクは頻繁に起こるものではありません。また、アイラインの色素が円状になっているために誘導電流が発生するリスクは、目を閉じて色素を直線にすることで抑えられます。

しかし、アイラインのアートメイク歴がある方は、必ず医師に申告をして万が一の事態を防ぎましょう。申告内容をもとにした医師の適切な検査方法により、安全にMRI検査を受けやすくなります。特に施術からの経過時間や使用インクの種類など、詳細な情報があると、医師の判断もより正確になり安心です。

施術直後は避けたほうがよい

アートメイクの施術直後は、皮膚が敏感になっており炎症を起こしやすい状態です。また、色素が完全に定着しておらず、不安定な時期でもあります。MRI検査に限らず、このタイミングで外部からの刺激を受けると、肌トラブルを起こしたり、仕上がりに悪影響を与えたりするリスクが高まります。

熱感や刺激を感じたり、ごくまれに軽度のやけどを伴ったりするリスクを避けるためにも、施術直後のMRI検査は避けたほうが賢明でしょう。特に、目元や口元など皮膚の薄い部位にアートメイクを施した場合は、こうしたトラブルが生じやすいとされています。

MRI検査の予定がある方は、アートメイクの施術後、少なくとも数日から数週間程度は検査を控えたほうがよいでしょう。どうしても施術直後にMRI検査が必要になったときは、必ず主治医に相談して判断を仰ぐことが大切です。事前の相談と適切なタイミングの見極めが、安全な検査につながります。

アートメイク後のMRI検査は事前申告をしよう

アートメイクをしていると、MRI検査が受けられないと考える方も少なくありません。しかし、基本的には施術後もMRI検査を受けられます。

ただし、色素に含まれる金属成分が磁場や電磁波に反応し、ごくまれに画像の乱れや熱感、やけどのリスクが生じるケースがあるため注意が必要です。特にアイラインや施術直後は、リスクが高まります。

近年は、アートメイクに使うインクの改良が進んでおり、安全性も高まっています。しかし、より安全にMRI検査を受けるためにも、アートメイクの有無や施術部位、時期など詳細な情報を、主治医や検査技師に正しく申告しましょう。

記事の監修者

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日本メイクアートアカデミー 代表 柿崎 暁

                           

2001年に日本アートメイクアカデミーを開校し、アートメイクを含める美容コンテストの主催や審査員を歴任しながら、これまで数千名の卒業生を排出している

                           

日本アートメイクアカデミー代表の柿崎 暁です!資格取得や眉メイクに関する情報を発信しております!